環境科学•バイオマス利用分野、生物化学工学、新技術分野

摘要

「環境科学•バイオマス利用」分野においては、128演題のポスター発表が行われた。本分野においては、産業上重要な化学物質を微生物に生産させる研究が多数見受けられた。現代社会においては資源の再生可能性が重要視されており、基幹化学物質の生産を、石油由来ではなく微生物由来もしくは植物由来のものに置き換えていくことが求められている。その意味で興味深かったのは、江口ら(ダイセル•神大)による、大腸菌における1,4-ブタンジオールの人工生合成経路の構築である。化学物質の微生物生産においては、その物質を生産するためのパスウェイをどのように設計するかが極めて重要であり、反応ステップを減らしつつ、それぞれの反応ステップを効率よく触媒する酵素を探索しなくてはならない。本発表では、人工代謝経路の設計において、荒木らの開発したinsilico代謝経路デザインツールM-pathが利用された。M-pathとは、適切な合成系を推定するソフトである。本ソフトを用いることで、今まで多大な時間が必要とされた人工代謝経路の設計を自動化することができる。発表者らはこのシステムを用いて、グルコースを出発物質として1,4-ブタンジオールを生産する経路を選択した。この生合成経路を構築するために9種類の酵素遺伝子を大腸菌に組み込んだところ、0.16g/ℓの最終生産物を得ることができた。本方法は、微生物による有用物質生産研究を加速する上で、重要な要素技術となるだろう。