無線多機能ホルダシステムによる切削加工モニタリング事例

摘要

少子化と高齢化に伴う生産年齢人口の減少や，ものづくりにおける熟練者の技能が十分に伝承されないことで，品質•生産性•利益率などの低下が大きな問題となりつつある.これを解決するためには，技能の教育•伝承に新たな手法を取り入れ，従来よりも効率良く迅速に熟練者を養成し，競争力に優れた技術を開発し続けることが必要とされ，特に加工現象をリアルタイムに定量化し，見える化する機能が不可欠である.切削加工では，加工点の温度•振動，ならびに刃先が被加工物から受ける力を適正な範囲に保ちつつ，安定した品質で製造し続けることが要求される.刃先の状態に関する量を収集するシステムと，工作機械の制御コンピュータ(CNC)が互いに連携すれば，上記の要求が満足され，生産性のさらなる向上につながる.MULTI INTELLIGENCE(以下Mlと表記)は，上記の背景から弊社が開発したIoTデバイスであり，マシ二ングセン夕用の工具ホルダで，加工点近傍の温度ならびに工具ホルダの振動加速度を，ワイヤレスかつリアルタイムにモニタリングが可能である.本稿では，Mlの構造•特性を説明し，MlとCNCの連携による加工の高度化事例を紹介する.