角形鋼管柱とH形鋼梁の接合部の設計

摘要

鉄骨構造物の耐震設計は，大地震時に梁端降伏による全体崩壊形により，架構として優れた変形性能を発揮することでエネルギー吸収を行うことを基本としている。兵庫県南部地震において今までにない大きな被害が続出し，その被害の多くが柱梁仕口に集中したこと，特に下フランジのスカラップ底を起点とする梁の母材破断により期待したエネルギー吸収が十分行われなかった事実は，それまでの接合部設計を見直すきっかけとなった。ただし現在でも接合部，特に梁端の応力を正確に評価することは難しく，設計者として悩む部分が少なからずある。評価を難しくする要素の一つに，梁端でのウェブの曲げモーメント伝達効率(以下，ウェブ効率)の評価が挙げられる。梁からの曲げモーメントを柱に伝達する際に，角形鋼管柱のスキンプレートが面外変形を生じることで，ウェブからの曲げモーメントの伝達が低下する現象である。ウェブ効率の評価法は，現在までにいくつかの知見が示されている。しかし，それらの知見には多少の相違が見られ，設計者により評価方法が統一されていないのが現状である。ここでは，それら知見の概要を紹介したうえで，梁端の算定応力評価のばらつきが招く設計上の落とし穴と，その落とし穴への対処法の一例を示す。