結び: 未来の現在

摘要

「1990年代後半に盛んだった"未来を期待する"という傾向は、新千年紀の始まりと共に終わりを迎える運命にあった。あの時代のほかの人物がそうだったように、私も、今この瞬間や実体験、今何に価値があるのか、といったことに新たな注目が集まると予見した。そして9/11がこの感受性を煽ったことで、アメリカは国としての非永続性と向き合わなければならなくなった。人々は、誰でもいつかは死ぬという無意識的な認識に目覚め、また物事を漠然と先延ばしにすることを不本意と思うようになり、こぞって赤ん坊を産み、離婚届をだしさえした。iPhoneからTwitterまで、様々なリアルタイム技術の導入: クリック1つで終わる注文のほうが実際の商品よりも重要視ざれる使い捨ての消費経済: マルチタスクは可能だが、実は知識の貯蔵や持続した話し合いができない脳味噌: 一生かけても稼げないほどの金が費やされる経済。こんな世の中では、誰もが時間的感覚を失ってしまう。この現象は、1970年代に未来学者アルヴィン•トフラーが"未来の衝撃"と称した、規範や状況の容赦ない変化と類似している。ただ、我々の時代においては"現在の衝撃"と呼ぶべきであろう。そして、これが紛れもなく"現在の"現象であるのにたいし、それは我々が想像していたような"今この瞬間の"現象とまではいかないことを、ここに指摘したい。」