長楽寺禅堂

摘要

400 年の歴史をもつ禅宗寺院内の禅堂の計画である。閉じた空間である坐禅堂を浮かせ、その下の広間を周囲の緑へと連続する開放的な空間にしたいと考えた。その宙に浮いたボリュームを、漆喰の白い塊として周囲から閉ざし、自己と対峙する静謐な空間とした。空間を包む漆喰は、手わざの温もりをもちながらも光が吸い込まれるような抽象的な表情を有し、禅の精神である「必要なもののみが存在することの豊かさ」を暗示している。坐禅堂に至る階段が白い塊から禅の世界へと導く。屋根の軒先や広間の緣側に生まれる陰影と丹精に撫でて押えられた漆喰の肌が、長い歴史をもつ枯淡な境内に溶け込み、周囲の樹木を鮮やかに際立たせて新しい風景を生みだしている。