東京の状景

摘要

盆地に広がる家並みに、菊竹清訓設計の都城市民会館のカタツムリ屋根がひよっこり顔だす町で、私は育った。大学進学で住むことになった東京では、そのメトロポリスの広大さや多面性に空間的な驚きの連続だったし、故郷との対比のなかに「都市」を発見した。留学したチューリッヒでは、故郷と似た山並みの風景や町のリズムにほっとしながら、細部までデザインの行き届いたモノや空間に囲まれた心地よい生活を送った。帰国後、久しぶりに訪れた渋谷駅前では、見慣れたはずの眺めの情報量の多さや過激さに心臓の鼓動が高鳴った。