戦後住宅生産史概観 住宅生産の近代化と「建築家」

摘要

世界史的な視点で俯瞰すれば、産業革命に伴う西洋諸国の都市化と人口増加が、それ以降の慢性的な住宅不足を引き起こし、相次ぐ戦災からの復興に加えて、第二次世界大戦後の技術革新による建築の複雑化が、建設現場における人件費上昇と労働力不足を各国で顕在化させた。西洋以外であっても時期は遅れるが、状況はほぼ同様である。ゆえに住宅生産の合理化——土工業化と大量生產——は、優れて近代的な建築的課題のーつであったといえる。改めて述べるまでもなく、20世紀に世界を席捲した近代合理主義建築=モダニズム建築の成立要因のーつには、この住宅生産の合理化があり、大量生産住宅〈シトローアン〉(1922)を発表して「住宅は住むための機械である」と述べたル•コルピュジエの有名な言葉も、この文脈において理解される必要がある。