民俗学から計画へ：今和次郎と西山夘三が住まいの生活調査で目指したもの

摘要

2018年3月から4月にかけて、オランダのTU Delftで「From Survey to Pianning」というタイトルで今和次郎と西山夘三のスケッチの展覧会を開催した。世界第3位にランクされる建築学部で、今なぜ今和次郎と西山夘三なのかと思われる方も多いだろう。実は筆者は、2008年に「Sensing Cities」というテーマでUCLのイアン·ボーデンらとコラボして以来、今和次郎が追求した庶民の視点、詳細な日常生活の描写から空間概念を問い直す姿勢を手掛かりにして、日本の近現代建築を新たな視点から紹介しようと、各地で展覧会を開催してきた。2014年にはNYのパーソンズ大学で「Design and Disaster] 展を、2015年にはマカオで「Sensible City」展を、2017年にはヴァージニア工科大学で「Body and Architecture through Sketches」展を行った。その後、2018年にTU Delftの都市計画史の研究者カローラ·ハイン教授に客員教授として招かれた機会に、教授の西山夘三研究とコラボして今和次郎と西山夘三のスケッチの比較を行うことを提案したのである。その趣旨はまず、近年日本の建築作家による近現代の住宅展覧会が海外で幾つも開催されてきたが、より多くを占める普通の人々の住宅の近代化は、あまり知られていないので、その系譜を世界的文脈へ位置づけること。そして次に、デジタル化とグローバライゼーションが進み都市·建築デザインの社会的役割が問われている時代に、建築表現の根本とされてきたスケッチにはどのような意味があるかを問うことだった。