ヒキモン再考

摘要

奄美大島の豊かな亜熱帯照葉樹林には、ァマミノクロウサギのような希少種を含む多様な生物が生息している。島の人々も古来よりこの豊かな森と共存してきた。奄美の人々と森との共存の証しが、この地域の伝統民家に特有のヒキモン構造である。ヒキモン構造とは、ヒキモンと呼ばれる亜熱帯特有樹種を用いた大断面の横架材を、床、内法、天井廻縁の位置で井桁に組み、柱に落とし込むことで軸組を固める構造方法である。部材と部材の結合は極めて単純明快で頑丈である。このため解体が容易であり、かつ解体による部材の破損や欠損が少なく、移築や再建がしゃすい。現地で聞き取りをしてみると、実際に奄美の伝統民家は、最初の普請の後、何度も解体·移築·再建され、現在に伝えられてきたことを確認できる。