温故知新グローバル左官建築家

摘要

大学では建築学科で学びました。2年生のとき、布野修司さん、竹山聖さんなど若い先生が入ってこられて、大学の雰囲気がずいぶん変わりました。設計演習も提出するだけだったものが、きちんと講評会をするようになったり、それまで日本と西洋の建築史しか授業がなかったのに、布野先生が「東洋建築史」という授業をやりだして、インドやイスラムの建築をいろいろ紹介してくださったり。原広司さん著の『集落への旅』という本もそのころ出版されて、原さんなりの集落の見方、建築の感じ方にすごく刺激を受けました。そしてそういう建築や集落を実際に自分の目で見たいと思い、大学院に進むにあたって1年間大学を休学して片っ端から見て回りました。まず中国に船で渡って、そこから陸路で延々、ヒマラヤを越えインドを越えて、ヨーロッパまで各国を歩きました。バーナード•ルドフスキーの『建築家なしの建築』で紹介されていた中国黄土高原の地下住居•ヤオトン、イランのバドギールと呼ばれる風の塔のある住宅、ポーランドの広場やルーマニアの装飾された木造民家などを実際に探して見に行きましたが、日本にいては想像もつかないような多様な建築のありように心を揺さぶられましたね。大学院では、布野先生のもとでチベット文化圏の聖地•ラサを対象に、宗教的な宇宙観によって構成された都市空間を研究しました。ラサでは市内を巡る巡礼路ゃ点在する宗教施設の配置が聖地としての空間構造を規定しているんですが、屠殺をやっているイスラム教徒は仏教徒の聖地である巡礼路の内側に住んじやいけないとか、違う民族が共生するいろんなルールがあります。見てきたものを「刺激的」というだけに終わらず、なぜそのような個性的な都市や集落や建築が生まれたのか、もう少ししっかりと学びたいと思って大学院の2年間を過ごしていました。