天井放射空調システムを導入したオフィス空間における人体放熱特性の数値解析

摘要

近年、オフィス空間を対象に、天井放射空調システム(以下、天井放射)の採用事例 が増加傾向にある。既往研究において、実験及び実測による全身温冷感や局所温冷感 の評価を行い、同システムの有効性を示す研究は多数行われている一方で、平均放射 温度の低下に伴った設定室温の緩和効果や人体表面の顕熱収支に着目した研究は少 ない。そこで本研究では、天井放射を対象として数値人体モデルとCFDの連成解析に より、人体の放熱特性を明らかにすることを目的としている。本研究における解析条 件では、天井放射によって形成される室内の温熱環境は天井吹きと比較して、MRTが 1.6°C程度低くなり、室温を1.5°C程度緩和しても、人体熱収支における放射による熱 損失の割合が什器無しでは8.6%増カロ、什器有りでは8.3%増加するため、天井吹きと 同等の人体温冷感となる環境が形成されることが示唆された。また、什器の有無によ る比較では什器を設置することによってFOOT部位での放射による熱損失がわずかに 減少する傾向がみられた。