省エネ住宅向け補助政策の所得階層別影響分析

摘要

日本における2015年家庭部門エネルギー消費量は全体 の14%を占めており，またそのCO2排出量は2005〜2013 年で11. 90/0増加している.この状況の下，家庭部門におけ るエネルギー消費量削減の方針が打ち出されており，エネ ルギー基本計画や地球温暖化対策計画では家庭部門の取り 組みの一つとして住宅の省エネ性能の向上や省エネ基準適 合の推進が挙げられている.省エネ住宅比率の拡大には補 助金や税制優遇などの政策によるインセンティブ供与が肝 要となるが，住宅という高額資産の購入に付随する補助政 策の利用機会は収入階級間で偏りがある可能性がある.世 帯年収別にみた住宅購入率及び購入価格はいずれも高年収 階層のほうが大きい.また年間エネルギー支出額について も高年収階層のほうが多いため，住宅の省エネ化によるエ ネルギー支出削減額も高年収層の方が多いと想定される. 結果として，省エネ住宅向け補助政策により受ける便益は 高収入層の方がより多〈，衡平性を欠いている可能性が考 えられる.そこで本稿では，省エネ住宅向け補助施策のう ち，世帯が住宅借入金特別控除（住宅ローン減税制度）を 利用して新築住宅を取得居住することによる経済的便益 と衡平性を分析する.