主要地域における白金族金属二次埋蔵量の将来推計: 次世代自動車の導入を考慮して

摘要

白金族金属(Platinum-Group-Metals: 以降PGM)は，Pt, Pd, Rh, Ru, Ir, Osの6元素の総称であり，このうち多くの元素が化学的に安定で，高融点，高強度，特異な触媒性を有している．このような性質からPGMは自動車の排ガス浄化触媒や工場用プロセス触媒等の工業製品のほか，宝飾品や電子部品といった民生製品など多くの用途に用いられている．このような中，昨今，各国で普及拡大が進められている次世代自動車導入はPGM需要に影響を与える可能性がある．特に，反応触媒として多量のPtが用いられている燃料電池自動車(Fuel Cell Vehicles: FCVs)の導入は，PGM需要増加の重要な要因となり得る1)2)．一方， PGMは複数の文献3)4)5)で，その不安定な供給が指摘されている．特に鉱石産出国の偏在は深刻な問題であり，上位2カ国の南アフリカとロシアで全体の約8割以上が生産されている6)．これにより，過去には南アフリカの鉱山従事者のストライキやロシアのPGM輸出規制により，深刻な供給不足に陥っている．加えて，PGMは鉱石中の濃度が極めて低いために，製錬段階でのエネルギー消費やTMR(Total Material Requirement)も大きい7)．こうした背景から，PGMの安定供給確保に向け，二次資源としての供給可能量を把握することは重要である．