トラックの隊列走行システムの車外HMI提示による周辺ドライバの運転行動への影響

摘要

近年，道路交通システムの発展に伴い，CO2排出による地球温暖化や交通事故などが重要な課題となっている．その解決策の一つとして，自動運転が注目を浴びており，様々なコンセプト開発とビジネス展開を通して，社会的な問題の解決に関する取り組みが行われている．特に物流産業に注目すると，ネットショッピングなどの普及により，運輸の輸送力の拡大に関するニーズが急速に高まっている．しかし，大型トラックドライバの高齢化や多様な要望による積載率の減少などによりドライバ不足が社会問題化していることに対して，ドライバの労働環境は改善されていない現状である．そこで，物流産業における問題点を解決するために，自動運転技術の応用が期待される．自動運転に関して，現在検討されている自動化のレベルのSAEレベル3の段階ではシステム側から急にドライバへフォールバックの要求を出す可能性もあるので，ドライバへの受容性の低い段階であると考えられる．また，レベル4，5の開発は技術的ハードルが高いため，実用化されるまで時間がかかることが予想される．そのため，図1に示すように，数台のトラックを電子連結技術により制御し，形式的にレベル4相当の自動運転を実現させる方法として，トラックの隊列走行技術が検討されている．トラック隊列走行は新しい技術として人，法律，技術，ビジネス面など，様々な制約を考慮し，その仕様の策定とHMI （Human machine interface）の設計が重要であると考える．トラック隊列走行の実用化のためには，現実的に起きうる問題に着目する必要がある．先行研究では，トラック隊列走行の社会的受容性を確保するために必要なプロセスや車内外のHMIについて検討されているが、周辺の一般ドライバ向けのHMIについては未検討である．周辺ドライバへの受容性は，トラック隊列走行の実用化のために重要な要素の一つであると考えられる．そこで，本研究では，トラックの自動運転・隊列走行の受容性の向上を目指し，周辺ドライバに対する車外HMIの提案とその効果を検証することを目的とし，車外HMIが周辺ドライバの運転行動に与える影響について，ドライビングシミュレータ（以下，DS）を用いて検討を行った．