NASA Common Research Model 80縮尺模型遷音速風洞詳細試験データの取得及び公開

摘要

遷音速旅客機空力特性解析の世界的な標準形状であるNASA Common Research Model（NASA CRM）の風洞試験模型を作成し、JAXA2m×2m遷音速風洞において現代の標準的な試験手法を実現する技術を確立して高精度なデータを取得、Aerodynamics Prediction Challengeにて公開した。rnここで公開されたデータは①揚力係数、抵抗係数、ピッチングモーメント係数からなる空力係数、②主翼および尾翼の表面圧力分布、③風洞試験中の動圧による主翼の変形量、④主翼の非定常圧力分布を含み、①～③は定常のCFD解析、④は失速が近づくと発生する振動現象であるバフェットを解析する非定常CFD解析のために使用することができる。なお、ここで公開された風洞試験データは、ディスクラフネスを用いた境界層の乱流境界層への遷移、赤外線カメラを用いた遷移確認、壁干渉補正、流れ方向の浮力補正、風洞測定部圧力の補正、スティングのたわみ補正といった現代の風洞試験において必須の技術を適用した信頼性の高いデータである。rnCFDの解析結果を検証するにおいて、風洞試験の結果は重要な比較対象である。NASA CRMの風洞試験データは海外主要風洞からも公開されている[7][8][9]が、国内で取得されたデータは結果の議論が容易であり、APCにおいても細かな通風条件や各種補正の詳細などをCFDの実施者と風洞試験の実施者が対話しながら議論することができた点においても重要なデータとなった。rnなお、本稿は主に参考文献[4][21]を元に作成し、データは[13][14]から転載した。