鋳造シミュレーションを用いた鋳造品の引け巣欠陥予測

摘要

我が国の铸物産業は，自動車産業や機械産業などの基幹産業が使用する部材の供給事業者として，高品質かつ低コスト製品の安定供給に努めながら，これらの産業の国際協力の維持に大きく貢献してきた铸物産業の最大のユーザーは輸送機械であり，全需要の6割以上を占める.铸物は自動車の基本性能を支える重要部位であり，铸物なしに自動車産業は成り立たないといえる.铸物を用いた自動車部品は，環境や安全性などの観点から自動車を軽量化するために，薄肉化や形状複雑化が要求されている.铸造における歩留まりとは，原材料の投入量に対して実製品として使用した原材料の比率を意味する.铸物の薄肉化により，引け巣欠陥を抑制するため铸物の歩留まりの確保が困難となっている.歩留まりが悪いと，原材料費や原材料を溶解するためのコストによる国際競争力の低下や二酸化炭素排出量が大きいなどの課題がある.現状，铸物の歩留まりは平均で50~60%程度に留まっていると推定されている.歩留まりを向上させることで，原材料費や溶解コスト，二酸化炭素排出量の削減が期待できる.一方で，歩留まりを向上させると，铸造欠陥が発生しやすいという問題が生じる.铸造欠陥増加は，製品の疲労強度を低下させ，性能に悪影響を及ぼす危険性が生じる.