燃料デブリ遠隔サンプリング用放電加工機の試作までの過程と問題点

摘要

2011年3月11日に発生した東日本大震災の津波により，福島第一原子力発電所は炉心溶融などの放射性物質の放出を伴う事故が発生し廃炉となった1).廃炉を安全に行うため放射性物質である燃料デブリを除去する必要がある.炉心熔融で生じた燃料デブリは，燃料棒の材料であるジルコニウムや燃料のウランと圧力容器の鋼が溶合って混合して凝固した物質，ホウ素と熔融した圧力容器の鋼に含まれる炭素と反応して生成される高硬度の炭化ホウ素(B_4C)2),そして圧力きから溶け出した燃料のウランや燃料棒の材料とコンクリートと混ざり凝固した物質2)3)などから構成されると思われる.燃料デブリ除去には切削加工が有効3)と考えられるが,燃料デブリに炭化ホウ素2)が存在すると切削が困難になる恐れがある.一方，材料の硬度によらず加工可能な方法として，放電加工や電解加工，レーザ加工，そして，ウオータージェット加工などがある.どの方法で燃料デブリを除去するかを判断するため，燃料デブリのサンプリングは必要である.燃料デブリは高い放射線を出すため，燃料デブリが存在する圧力容器内は非常に高い放射線量を有し，燃料デブリのサンプリングは遠隔制御4)で行うしかない.また，放電加工で燃料デブリのサンプリングを行うには，燃料デブリに含まれるコンクリート，砂利,ジルコニアなどの絕緣体にも放電加工が行う必要がある.本報告は，絕緣体でも放電加工が行える補助電極法5)を用いて遠隔制御で燃料デブリのサンプリングを行うための準備について報告するとともに解決すべき問題点を述べる.