Grade 91鋼およびGrade 92鋼の多軸クリープ特性

摘要

9Cr鋼は優れたクリープ特性を有していることから，発電プラント等の耐熱構造部材として幅広く用いられている．一方，9Cr鋼溶接継手部を長時間使用すると，熱影響部（HAZ）細粒域において，タイプIV損傷が発生し，母材部に比べて早期に破壊してしまうことが実用上問題となっている．タイプIV損傷の要因としては材料的，力学的な観点から様々な検討が行われている．なかでも，HAZ細粒域のクリープ変形が母材および溶接金属に拘束されることでHAZ細粒域が多軸応力状態になり，この応力多軸性がボイドの発生·成長に影響していることが指摘されている．筆者らはこれまでにGrade91鋼母材およびHAZ細粒域を対象として塊状切欠きクリープ試験を実施し，応力多軸性とクリープ損傷の関係について検討してきた.本研究では，Grade92鋼母材およびHAZ細粒域を対象とした環状切欠きクリープ試験を実施し，多軸応力下におけるクリープ特性を明らかにするとともに，Grade 91鋼との相違点についても検討を行う．また，有限要素解析を用いたGrade 92鋼のクリープ寿命評価法を提案し，クリープ試験結果との比較を通して，提案した評価法の妥当性を検証する．