体性感覚誘発電位を用いた認知作業負荷推定アルゴリズムの検討

摘要

認知作業負荷は脳の内部状態に応じて絶えず変化し、思考や集中などアクティブな状態では高く、休止状態では低くなる[1]。リアルタイムでの認知作業負荷推定が可能になれば、車両運転中のドライバーの倦怠感レベルの測定や入院患者のリハビリ中の運動や飛行機を操縦中のパイロットの精神的負荷の評価など多くの分野での活用が期待される[2]。集中度を測定可能な手法の一つに、聴覚定常応答(ASSR)を用いた認知作業負荷推定がある[3]。これは脳波を用いて音声刺激に対する反応から認知作業負荷を推定する手法である。しかし、ASSR には、対話などの作業中での測定が不可能であることや、騒音や雑音を伴う環境下での利用が難しく活用の場が制限されるという問題点がある。そこで、本研究では、対話中でも使用可能で周囲環境に影響されにくい触覚刺激を用いて、体性感覚誘発電位(SEP)を作業負荷の推定指標とする手法を提案する。本稿は、視覚N-back タスク用いた実験を通して提案手法の実現可能性を示すとともに、位相同期指標の一つであるPLI や周波数解析の分析を通して認知作業負荷推定アルゴリズムの考察を行う。