実物体の仮想色修復における知覚軽減を考慮したカラーキャリブレーション法

摘要

近年，プロジェクタ·カメラシステムの一つの研究であるプロジェクション方式複合現実感の技術を用いて，任意の反射特性を持つ投影面に対して色再現を行うための研究が多く行われている．筆者らはこれまでに，プロジェクタとカメラを用いて物体の反射特性を計測し，実物体にプロジェクションを行うことによりインタラクティブに仮想的な彩色を行うシステムを構築してきた．これは，彩色デザインシステムや色彩が劣化した文化財など実物体の仮想的な色修復への応用が期待できる．このようなプロジェクタ·カメラシステムを用いた研究では，幾何学および色に関するキャリブレーションが必要である．この過程はユーザができるだけ知覚し難い手法を取るのが望ましいと考えられる．色彩情報が不要な幾何学キャリブレーションに関しては，人間に不可視な赤外線を用いて計測を行うことで，ユーザに知覚されないようにすることが可能である．またZollmann らはコード化されたパタンを映像に埋め込むことで人が知覚しないような幾何学的キャリブレーションを行う手法を提案している．しかし色のキャリブレーションに関しては，可視光パタンを投影する必要があり，ユーザにとって意味をなさないパタン光によるキャリブレーションの処理は，ユーザの利用妨げとなる可能性がある．本研究では物体の反射特性を計測するカラーキャリブレーションについて，人間の視覚特性を考慮し人の知覚を軽減した手法を考える．