高周波電磁界のFEAで現れる複素対称行列を係数に持つ線型方程式を対象とした反復法は収束性が悪いことが知られている.また,解析の対象が大規模化?複雑化するにつれ,収束性はさらに悪化する.ここで,収束性の改善には倍精度を2つ用いて四倍精度程度の精度を実現する擬似四倍精度や精度を任意に指定する任意精度演算といった多倍長精度の演算が有用であることが示されている.本研究では,線型方程式を解く反復法としてMINRES法を複素対称システム向けに拡張したCOMNRES-QLP法およびMINRES-like_CS法を用い,これらに擬似四倍精度の演算の適用を行った.擬似四倍精度演算はQDライブラリを用いて行った.数値実験では,TEAM Workshop Problem 29の全身空洞共振器のモデルを表す行列を対象として,多倍長精度演算を適用した複素対称行列向けの反復法により計算を行った結果,収束性の改善と計算時間の高速に成功した.
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