金属３Ｄプリンタを用いたレーザ焼結積層構造表面からの低熱流束における水沸騰現象の観察

摘要

近年，マイクロ機器の増加に伴う高密度発熱化が進み，沸騰冷却が改めて注目されている．伝熱面の微細な傷や窪み（以下，キャビティ）が気泡核となる核沸騰の研究では，エメリ紙で磨いた伝熱面(1)や，最近ではMEMSによる伝熱面(2)が利用されている．一方，実用的には，種々の人工キャビティ(3)(4)が工夫されている．著者らは，金属3D プリンタによる造形面がこの種の機能をもつ可能性があると考えている．焼結型の金属 3D プリンタは，金属粉末をレーザ焼結で固めて積層を繰り返し，造形する. レーザ出力や送りによっては焼結の程度に差が生じ，積層面は複雑な凹凸面となる可能性がある．沸騰に有効なキャビティが形成されれば，沸騰伝熱面として利用できる可能性が広がる．従来，焼結金属面における水の飽和沸騰の研究例(5)はあるが，上記のような造形面を沸騰伝熱面とする研究例は著者らが調査した範囲では見つかっていない．金属3D プリンタによる造形技術が確立，実用化されつつある今日，この技術が伝熱機器と本格的に結びつく日も近いと予想される．