安定化層追加形成を不要とした低コストY系超電導線材

摘要

集合組織金属基板法は圧延と熱処理だけで2軸結晶配向した基材テープが得られることから，IBAD法に比べて高温超伝導線材の低コスト化に有利であると考えられる。現在はNi-W合金テープを使った線材が販売されているが，更なる低コスト化には，素材価格の更に低い基材テープが求められている。本研究ではFe,Alに次いで安い汎用金属であるCuを基材テープに使って高性能のY系線材作製できることを示した。また，中間層を導電性物質とすることで，Agフリーを実現でき，基材として使用するCuテープに安定化層を兼ねさせることも可能であることから大幅な低コスト化が可能になると思われる。高温超伝導線材が市販されるに至り，最近では機器の開発が進hでいる。しかしながら，超伝導が社会に貢献できるようになるためには「価格」という大きな壁を乗り越えなければならない。材料，線材，機器，システムの全ての分野で更なる性能向上と価格低減が必要であることは論を待たないが，特に線材価格の低減は急がれる。我々が開発中の立方体集合組織Cuテープ上に導電性中間層を介してYBCO層を形成する技術は，低コスト化のための1つのキー技術になる可能性があると考えている。