Roberts のg 関数を用いて計算した電流―電圧特性の傾斜から推定される太陽電池の直列／並列抵抗の誤差

摘要

太陽電池の直列抵抗及び並列（シャント）抵抗は，パワー変換効率や電流―電圧特性の形状に大きな影響を与える。これらの直列抵抗及び並列抵抗は，特に何も断り書きがなければ，図1 に示す太陽電池の等価回路モデルにおけるRs 及びRp であると考えるのが一般的であるといえる。これらの値を実験的に得られた太陽電池の電流―電圧特性から見積もる方法としては，等価回路の電流―電圧特性の理論式との誤差が最小になるようにカーブフィットを行って推定する方法が妥当であると考えられ，現在では Excel のソルバー機能を用いることでも実行可能である。一方で，有機薄膜太陽電池やペロブスカイト型太陽電池などの研究報告では，しばしば電流密度―電圧特性曲線の傾斜の逆数dV/dI の短絡時(V=0)及び開放時(J=0)における値をそれぞれ並列抵抗と直列抵抗として示すことが，簡易的な方法としてしばしば採用される。この簡易的な方法で得られる値と，図1 における真のRs 及びRp との値の誤差については，あまり議論されることがないようである。本年度春季の講演会で筆者はこの誤差をLambert のW 関数W0(x)を用いたdV/dI の解析的な表式を用いることで調べた結果を報告した。その中で，これまで知られているdV/dI の解析的な表式は，通常のプログラミング環境やExcel のような表計算ソフトで使用される倍精度浮動小数点で実装するとオーバーフローを起こしやすく，Is とRp がともに大きい高効率の太陽電池については，実際には計算が難しい場合があることを指摘した。