Shape Model Fitting 法による米国産作物フェノロジーの推定

摘要

広域を対象とした作物収量予測には、次にあげる４種類の空間情報を把握することが重要である。（１）作物生育量、（２）土地利用図、（３）気象情報、（４）作物生育ステージ。（１）作物生育量は、NDVI に代表される近赤外と赤の反射率から計算される植生指数を用いることである程度把握することができる。（２）土地利用図は、衛星リモートセンシングの最も得意とする成果情報である。米国農務省統計局(USDA/NSS)は、Landsat 8OLI 等を元に作成した30m 分解能の作付分類図(CroplandData Layer; CDL)が毎年発行している。そして、最も衛星リモートセンシング技術が実利用されているのが（３）気象情報分野であり、JAXA-GlobalSatellite Mapping of Precipitation (GSMap)やAMSR2プロダクトの降水量, 土壌水分、JAXA ひまわりプロダクトの日射量等が配信されている。一方、（４）作物生育ステージ情報は、異常気象発生時の減収量予測を行うために必要不可欠なデータであるにも関わらず、（１）～（３）で見られるデータ解析技術が確立されているわけではない。作物収量の環境応答は、作物種?生育ステージに応じて異なるため、従来の植生指数をもとにした収量予測手法を改良し、高温不稔など植生指数の変化では観測できない生理応答を考慮した収量モデルを実現するには、（４）の空間情報を整備することが必要とされている。他方、NASA-LP DACC から、高頻度観測衛星センサ（MODIS）データをもとに作成された”MODIS Land Cover Dynamics (MCD12Q2)product”(通称：MODIS Global Vegetation Phenologyproduct)があるにはあるが、本プロダクトは、自然植生のフェノロジーを対象とした限られた期間(2001～2012年)のみのプロダクトであり、MCD12Q2で用いられるフェノイベント(greenup, maturity,senescence, dormancy)は抽象的な定義であり、農学で使われている作物生育ステージとの整合性が取れているわけではない。このような背景から、既開発の生育ステージ推定手法(Shape Model Fitting 法)を改良し[1]、時系列MODIS データから、米国の主要作物８種類（トウモロコシ，大豆，冬小麦，春小麦，大麦，ソルガム，水稲，綿花）の生育ステージ（出穂?成熟等）及び農作業（播種?収穫）の時期を把握するための、より汎用的な作物フェノロジー把握手法を開発することを目的とした。ここでは、生育ステージ?農作業など、作物生育に関わる時間情報を総称して作物フェノロジーと呼ぶこととする。