風車の雷リスクコストの検討

摘要

落雷によりブレードが損傷すると，風車に重大な障害を来すのみならず，公衆災害につながる恐れがある。そのため，風車を設置する場合にはサイトの雷特性に適応した雷保護性能を有する風車を選定するとともに，運転開始後も万全の維持管理を施す必要がある。しかしながら，風車の耐雷性能は我が国の雷性状（特に冬季雷）に完全には適応できておらず，さらには冬季雷や山岳雷のように着雷や風車に与える影響が未解明の事象も残されていることから，雷被害の根絶には至っていない。今後雷性状の解明と風車の雷対策の充実が望まれるところであるが，風力発電事業者は足元の対応策として，メンテナンス，事前停止，事後停止などからなる雷リスクマネジメント手法を用いて，雷事故の防止を図っているところである。しかしながら4章で述べているように，雷リスクマネジメントにも多額のコストが掛かっている。特に雷予測による事前停止は全台停止となるため影響が大きいうえ，冬季雷は予測精度も低く不要停止の時間も多い。あわらの例では，成功した有効な停止時間は暦時間の1.6%であったのに対し，予測が失敗した不要停止時間は2.5%であった。こうした状況から，费用対効果に優れる効率的な雷保護対策の確立が望まれている。