Al-Cu系合金におけるGPゾーン周辺格子歪み場の解析

摘要

Al-Cu系合金は代表的なアルミニウム合金であり、その時効析出過程初期においてCu原子のクラスタリングによるGPゾーンが発達する。GPゾーンは、Cu原子が創母格子（200）面に原子一層で凝集するGP-Ⅰゾーンと、同様のCu原子層が（短範囲に）規則配列したGP-Ⅱゾーンとに大別できることが知られている。X線回折や中性子線回折、電子顕微鏡などにより様々な解析が行われた結果、肝ゾーンでは、Cu原子サイズがAl原子サイズよりも小さい（原子半径Al：0．143nm、Cu：0．128nm）ことに起因して、その周辺に顕著な格子歪み場を形成し、また、円板状にCu原子が集合する形状を取ると考えられている［1］。近年、電子顕微鏡の分解能の向上により、原子分解能でのGPゾーンの観察が行われた［2］。しかし、未だ具体的な面内構造は解析されておらず、ひずみ場に関してはまだ十分に理解されるには至っていない。本研究では、収差補正STEM観察および第一原理計算を用いることにより、Al-Cu合金系のGPゾーンにおける格子歪み場の定量解析を行う。また、収差補正STEMの浅い焦点深度を巧みに利用することで、GPゾーンの面内構造解析を行い、格子歪み場の観点から面内構造の考察も試みる。