傾斜機能型アブレータの評価解析手法の検討

摘要

サンプルリターンカプセルなど大気圏へ再突入する宇宙機は，大気圏再突入時に非常に過酷な空力加熱環境に曝される．この空力加熱環境から機体を保護するため，熱防御システム(TPS : Thermal ProtectionSystem) が施され，TPS の材料として炭素繊維に樹脂を含侵したアブレータが用いられている．現在までに開発が行われてきたアブレータとして，小惑星探査機はやぶさやUSERS に使用された密度1.3～1.5g/cm~3 のCFRP アブレータや宇宙探査機スターダストに使用された密度0.3g/cm~3 程度のPhenolicImpregnated Carbon Ablator(PICA)などが挙げられる．TPS には，機体内部を空力加熱から守るための優れた耐熱性と断熱性，ペイロード比向上に向けた軽量化，飛行中の空力特性変化による着地点分散を防ぐための優れた耐表面損耗特性が求められる．しかし，密度1.3～1.5g/cm~3 のアブレータは，耐表面損耗特性に優れるものの，機体に対するアブレータ重量比が高いという課題があり，また，密度0.3g/cm~3 程度の軽量なアブレータでは，軽く，断熱性には優れているものの，表面損耗量が大きいという課題がある．そこで著者らにより，アブレータ表面近傍を高密度化し，内部を低密度化することで，TPS に求められる耐熱性，断熱性，耐表面損耗特性，軽量化の両立を可能とした傾斜機能型アブレータの開発が行われた．