切欠材の疲労強度整理法と定式化に関する基礎概念（繰返し塑性順応の仮説および降伏域基準型寸法効果則）

摘要

本報では，切欠材の疲労強度を整理し定式化するためのふたっの概念が述べられる；ひとつは繰返し塑性順応の仮説であり，他は降伏域基準型寸法効果則である．両者はそれぞれ独立しており，立脚点は全く異なるためお互いどうしの干渉効果は存在しないと考えてよい．繰返し塑性順応の仮説は疲労機構に関係した疲労辷り帯の繰返し応力状態を表現し具体的には平均応力効果の表現パラメータ，等価繰返し応力比として定式化される．一方，降伏域基準型寸法効果則は降伏域成長曲線の標準化にもとづいて定式化され，延性材料に対し通常よく用いられる弾性破損法則の寸法効果則として位置づけられる．外形および切欠寸法ともに大きい場合には弾性応力集中係数を組込むことで定式化される．これらの概念は明らかに繰返し荷重による材料の非弾性挙動に関係するものであるが，本研究では材料定数や実験定数に頼ることなく荷重·形状などの疲労試験条件のほかに弾性力学パラメータだけを用いて概念を組立て，平滑材と切欠材の疲労強度の間を完全に解析的にリンクするように理論立てを行う．なお，提案した寸法効果則は平滑·切欠·き裂材の寸法効果を統一して説明するばかりでなく，これまで必ずしも明らかにされているとは云えない平滑材自体の寸法効果を塑性力学基礎式にもとづいて解析的にしかも簡単に予測することを可能にする．