太陽光発電出力の不確実性を考慮した蓄電池最適運用技術の開発

摘要

地球環境問題の解決に向け、世界各国で再生可能エネルギーの導入が進められている。我が国においても、「長期エネルギー需給見通し（再計算）」（2009 年8 月）において、太陽光発電を2020 年度頃までに2005 年の20 倍程度(2800 万kW) 導入するという目標が示されている。太陽光発電は、出力が気象条件で大きく変動するため、安定的·計画的運用が困難であるという問題がある。太陽光発電の出力変動への対策としては、数分程度以内の短周期の変動成分を、1 次遅れ要素や移動平均値などによる蓄電池制御で平滑化した上で、需給予測に基づいて作成した運転計画に沿って、蓄電池や他の分散電源を運用することが一般的である。しかし、太陽光発電出力の予測困難な変動により、計画どおりに運用することが不都合になる場合がある。そのため、予測困難な変動に対しては、運用過程において運転計画を修正することで、その影響を緩和することが試みられている。一般に、太陽光発電の長周期の変動成分に対応するための運転計画は、前日の気象予測により作成されるが、当日予測の方がより確度が高い。よって、予測から逸脱した状況において、比較的確度が高い当日予測により運転計画を修正すれば、運用効果の改善が期待できる。しかしながら、蓄電池の運転計画修正による予測逸脱への対応には、修正前の計画によっては、修正による効果の改善が期待できない場合があるという問題がある。つまり、修正前の運転計画により蓄電池を運用した結果、修正時点で蓄電池の動作を調整する余地がなくなってしまうと、運転計画修正による効果の改善は期待できない。例えば、蓄電池が空の状態では、放電量の調節は不可能であり、逆に、満充電状態では、充電量の調整は不可能である。そこで、我々は、太陽光発電と夜間電力の活用により事業所のピーク電力を低減することを想定した蓄電池の運用技術の研究開発の中で、計画修正を前提とする蓄電池の運転計画を、起こりうる様々な需給シナリオを想定したシミュレーション結果に基づいて、最適化する技術を開発し、実証実験によりその効果を確認することを予定している。以下、ピーク電力低減に関する問題を説明してから、開発技術の内容を説明する。