高速フレーム（HVAF）溶射によるWC 系サーメット皮膜の機械的特性と残留応力に及ぼす膜厚の影響

摘要

高速フレーム溶射は，原料粉末を燃焼炎で加熱·加速し衝突させることで，緻密かつ密着性に優れた皮膜を成形する．このプロセスで作られたWC 系サーメット溶射皮膜は優れた耐摩耗性を活かして，硬質クロムめっきの代替技術として利用されている．さらに，高速フレーム溶射では mm 単位の厚い皮膜を作製可能で，焼結を必要としない WC 系サーメット部材の作製法として検討されはじめている．しかし，これまで数百 μm 程度で利用されてきた経緯もあり，膜厚が皮膜の特性に及ぼす影響に関する文献はほとhど無い．厚膜作製時に皮膜は長時間火炎に曝され，かつ粒子の衝突を受け続けることになるため，皮膜の機械的特性の劣化が危惧される．そこで，前報では WC 系サーメット溶射皮膜の硬さと破壊靭性に及ぼす膜厚の影響について調べた．本報では，さらに残留応力に及ぼす膜厚の影響をについて検討した．