曲げ振動モードを用いた小型圧電攪拌機の開発

摘要

化学プロセスなどでは，ビーカーや試験管などに入った溶液を撹拌するために，モータと連結した回転軸を回転させ撹拌する攪拌機や，磁力によって回転子を回転させるものが使用されている．また直径数mm 程度の小さい試験管内の撹拌になると，試験管ごと振動させる装置が使用される．この装置は，外部に取り付けられた電磁モータなどで振動を生成するため，装置自体が大きい，振動や騒音を発生するという問題がある．1ml 以下の微小量の溶液を撹拌する方法には，Micro-Total Analysis Systems (μTAS) などへの応用を目的として提案されているものがある．その駆動原理は，圧電効果，電気流体，温度による対流，音響流などがあるが，サイズの割に出力が小さい，構造が複雑であるという問題がある．本研究では，振動によって生じる流れを駆動原理とし，1ml 以下の溶液を回転させることが可能な攪拌機を提案する．攪拌機の形状は，図1 に示すような金属製の直方体で，その中心に穴が開いているというシンプルなものであり，その穴に溶液を入れて撹拌する．直方体の側面に貼り付けられた圧電素子によって直方体の振動モードを励起すると，溶液を回転させ撹拌することができる．この原理であれば，装置を数mm で製作することも可能であり，振動も小さく静粛である．本報告では，振動によって流れが生じる現象を確認したうえで，小型圧電攪拌機を試作し，印加電圧の電圧，周波数，位相差を変えたときの，流速の変化などを実験で明らかにする．