カーボンナノチューブ複合メタルボンド薄型砥石の耐摩耗性

摘要

バイオチップや光学部品などの石英ガラス製品の微細穴加工·溝加工，あるいは半導体ウエハの切断加工では，小径軸付きダイヤモンド電着砥石や薄型砥石が用いられている．我々は，機械的強度，熱伝導性，潤滑性などに優れるカーボンナノチューブ（以下，CNT）を複合することにより，前記ツールの性能向上を検討している．これまでに，小径軸付きダイヤモンド電着砥石に応用し，CNT の複合化により，砥粒保持力が向上し，工具寿命が改善することを報告した．これらの改善は，CNT 複合ニッケルめっき被膜が，通常のニッケルめっき被膜に比べ，CNT の複合化およびニッケル結晶粒の微細化により硬度が向上し，耐摩耗性が改善されたことによると考えている．薄型砥石の場合は，ボンド材の耐摩耗性や摩擦係数などのトライボロジー特性が加工性能に大きな影響を与える．特に，石英ガラスの加工においては，加工屑がニッケルボンドに付着し，目詰まりを起こし，砥粒脱落を誘発するため，石英ガラスとボンド材の反応性を下げることが，加工性能を維持するために重要である．本報告では，放電プラズマ焼結によりCNT 含有量の異なるNi 基複合材料および薄型砥石を作製し，鋼球およびガラス球に対する反応性，耐摩耗性および摩擦係数を定量的に評価し，CNT 複合化がトライボロジー性能に及ぼす影響について考察した．