材料開発における産学連携－東北大学の取組みを中心に

摘要

このように現在の産学連携はバブル崩壊後の経済情勢を強く反映したトップダウン的なものであるが、一方、国内外の歴史を紐解けば、産業界と大学との間の密接なっながりはいくつでも挙げることができる。1871年、明治政府工部省が設立した工学寮が東京帝国大学工学部の起源とみることができるが、東芝やトヨタ自動車は同校出身の教授の存在と切り離すことは出来ないし、太平洋の向こうに目線を移せば、米国スタンフォード大学近辺のリサーチパークはターマン教授が1925年、教え子のヒューレットとパッカードに起業を促したことがきっかけである。昨年、100周年を迎えた東北大学金属材料研究所（金研）も住友財閥からの寄附を抜きにその歴史を語ることはできない。本講演ではこのような大局的視点を振り返りつつ、近年の産学連携に焦点を絞り、また材料分野固有の立ち位置を踏まえつつ、材料開発における産学連携について東北大学の活動を中心にいくつかのトピックスを紹介したい。