体調急変検知に向けた心臓血管系モデルの構築

摘要

近年，運転中にドライバーの体調が急変し，ステアリング操作等が不能な状態に至ったために引き起こされる交通事故（以下，健康起因事故）が大きな社会的問題となっている．健康起因事故の場合，ドライバーによる危険回避は期待できないため，多くの人を巻き込む大事故に発展する可能性が非常に高い．ここで，図1 に平成17年から27 年の交通事故件数の推移を，交通事故全体と健康起因事故に分けて示す．交通事故全体の事故件数は自動車安全技術の向上などに伴い単調減少しているのに対して，健康起因事故は高齢化の進行などが原因で増加傾向にあることがわかる．また，この健康起因事故を原因別に分類すると，心疾患，脳血管疾患，大動脈瘤および乖離などに代表される心臓血管疾患がその多くを占めることが知られている．以上のような現状を踏まえ，心臓血管疾患に起因する体調急変を検知するための手法が求められている．体調急変検知に成功すれば，周囲にそれを報知するとともに車両を自動的に減速停止させることで大事故を未然に防ぐことができる．