傾斜軸EEF台車の曲線通過性能と車輪·レール摩耗特性の基礎的評価

摘要

各国で導入が進hでいるLRT (Light Rail Transit)には，交差点での右左折といった急曲線が存在する.このような急曲線では，一般的に使用されている左右の車輪が車軸で結合されている輪軸（以下，一体輪軸）の自己操舵性能はもはや期待できず，自己操舵の限界を解消するためには独立回転車輪(以下，IRW)が潜在的に有効である.しかしながら，一般的なIRWは車軸による拘束が無いため，自己操舵性能そのものが備わっておらず，その導入のメリットは車両の低床化等に限られていた.一方，IRWを利用した自己操舵台車としてEEF台車が1980年代後半にFrederichにより提案された.EEF台車は車輪踏面に作用する重力復元力を活用した自己操舵台車であり，優れた曲線通過性能を実現できる.さらに，EEF台車は過去に欧州の一部のLRV (Light Rail Vehicle) で一時期実用化されたこともある.しかしながら，走行安定性に課題があったためか現在の実用例はない.そこで、その弱点である走行安定性の低下を防ぐことを目的とした傾斜軸EEF台車が提案され，モデル化と数値解析により，走行安定性と曲線通過性能の両立が可能であることが示された.本稿では，汎用マルチボディ·ダイナミクス解析ソフトSIMPACKを用いた曲線通過シミュレーションを実施し，提案した傾斜軸EEF台車の車輪·レール摩耗特性の評価を行う.また，傾斜軸EEF台車との比較のために，IRWを用いた二軸台車と，一体輪軸を用いた二軸台車を使用した曲線通過シミュレーションを行い，曲線通過性能や車輪·レール摩耗特性を比較評価したのでその内容を報告する.