層流剝離泡を含む翼面上のスパン方向の流れ場の構造

摘要

低レイノルズ数領域における翼の空力特性は高レイノルズ数領域とは異なる性質を持つ．例えば，揚力係数に現れる顕著な非線形性や最大揚力係数の減少，最小抗力係数の増加，失速特性の変化などが挙げられる．低レイノルズ数領域では高レイノルズ数領域とは異なる翼まわりの流れ場が現れる．翼面上の境界層が層流状態のまま剝離を起こす層流剝離や，低レイノルズ数領域では剝離した流れが乱流に遷移して翼面上に再付着して形成される層流剝離泡が現れることが知られている．翼面上に生じる層流剝離泡には，迎角の増加に伴い長さを縮めながら前縁方向へ移動するshort bubble と迎角の増加に伴い後縁方向へ移動しながら長さを伸ばすlong bubble の二種類がある.翼面上に剝離泡を伴う流れ場は複雑な様相を示し，李家らは，失速付近でのNACA 63‐009 翼(Re=1.3×10~5)を用いた実験で剝離と再付着を低周波数で繰り返す流れ場が形成されることを報告している．