パーキンソン病解明に向けた運動神経ネットワークモデルの検討

摘要

パーキンソン病は神経変性疾患の一つであり，振戦·固縮·無動などの運動機能障害が代表的な症例である．この病気は，脳内のドーパミン不足によって異常な運動指令が大脳基底核から発せられることが原因と考えられているが，ドーパミン不足の根本的な原因がわかっていないために治療は対症療法的なものに限られ，未だ根治する治療法は確立されていない．また，ドーパミン不足によって引き起こされる運動指令の異常と，振戦·固縮などの運動機能障害との因果関係も明らかになっているわけではない．例えば，振戦が見られる患者と固縮が見られる患者との差がどこから来るのかは不明なままである．神経変性疾患と総称される病例やそれに伴う運動機能障害は他にも数多くの例があるが，その多くが依然として原因が不明のままであり，したがって根本的な治療法も確立されていないのが現状である．本研究では，脳·中枢神経系ネットワーク·三次元筋骨格モデルから成るヒトの関節運動を再現するシミュレーションモデルを開発し，パーキンソン病などの運動機能障害を伴う病例をコンピュータ上で再現することで，原因究明や有効な治療法の確立などに資することを目的としている．本稿では，その中でも特に中枢神経系ネットワークモデルに関して述べる．