衝撃を受けた際のテーパーシールにおける流体表面の挙動（テーパーシールの姿勢及び表面張力の接触角の影響）

摘要

テーパーシールは流体動圧軸受部から大気開放口に向かいテーパー状に隙間が広がる構造を持つことにより，表面張力と毛管効果を利用して潤滑油の漏れを防ぐ装置である．HDD のスピンドルモータに使われる流体動圧軸受には潤滑油漏れを防ぐためにテーパーシールが流体軸受端部に設けられている．HDD を使用する機器には可搬性を要求されるものも多く，スピンドルモータが定常回転している時だけでなく，外部から衝撃を受けた際にも流体軸受からの潤滑油の漏れを防ぐことができる設計となっていなければならない．その潤滑油漏れを防ぐためのテーパーシールのメカニズムを解明するため，前報ではスピンドルモータが衝撃を受けた際のシールにおける液面の挙動を回転体の応答，流体に作用する慣性力，重力及び表面張力などの影響を考慮し，混相流として理論的に検討し，VOF 法及びMDM法を使った数値解析方法を提示した．モータが衝撃を受けた際のシール液面の挙動を回転体の応答·シャフトの偏心·テーパーシールの形状·潤滑油の濡れ止め剤の影響に注目して解析した．シール漏れに最も影響するのは衝撃に応答するシール液面の軸方向の移動速度と振幅であり，そのシール液面の移動速度と振幅は衝撃加速度のほか，回転体の応答，シャフトの偏心及び液面でのシール隙間に依存することを指摘し，潤滑油漏れの対策を提案した．前報に続き，本報は衝撃を受けた際のスピンドルモータの姿勢および表面張力接触角の速度依存性を考慮した動的接触角がシール液面の挙動に及ぼす影響を数値解析によって解明した．また，シールが潤滑油漏れを起こすときのメニスカスの様子を解明した．