薄膜流体潤滑下で現れる弾性流体潤滑領域

摘要

弾性流体潤滑領域は，転がり軸受やカム·タペット間，トラクションドライブにような外接接触部での潤滑状態として広く知られている．局所的な荷重支持のため，そこで起こる圧力上昇は数GPa にまで達し，潤滑油の年度増加と表面の弾性変形を引き起こす．弾性流体潤滑状態はこの二つの作用の程度により，いくつかの領域に分類されることが明らかになっている．一方，すべり軸受などの面接触形態の潤滑状態は，等粘度剛体の仮定に基づいた流体潤滑理論が広く使用されていることからわかるとおり，粘度増加および表面の弾性変形が問題となることは少なく，相当な高荷重が作用する場合に限られるとの認識であった．しかしながら，油膜厚さが薄い領域では，わずかな弾性変形量であってもそれが油膜厚さと同程度の大きさであれば，くさび膜の形状を変化させることになる．既報において，著者らは薄膜流体潤滑領域において傾斜平面軸受を対象とした弾性流体潤滑解析を行った．その結果，わずかな弾性変形が油膜の傾斜を消失させ負荷能力が等粘度剛体理論と比較して劇的に低下することを明らかにした．本報では，ステップ軸受を対象とし，弾性流体潤滑解析を行った．