脊髄硬膜の引張強度に及ぼすひずみ速度の影響

摘要

ヒトの体には頚部から腰部にかけて脊髄があり，脳とともに中枢神経系を受け持つ重要な役割を果たしている．脊髄は髄膜と呼ばれる3 種類の膜に覆われており，外側から硬膜，クモ膜，軟膜の順に構成されている．クモ膜と軟膜の間には脳脊髄液が満たされており，脳や脊髄を衝撃から守る役割を担っている．この脳脊髄液が減少することによって頭痛，めまい，首の痛みなどの症状が現れる脳脊髄液減少症という病気がある．脳脊髄液が減少する原因として，交通事故やスポーツ外傷，転倒などの衝撃などの外力で硬膜が損傷し，そこから漏出しているのではないかと考えられているが，現段階ではその漏出メカニズムは解明されていない．また，このメカニズムを解明するには，硬膜の強度特性を把握する必要があるが，これまで硬膜の力学特性に関する研究はあまりなされていないのが現状である．そこで，本研究ではウシ頸椎の硬膜を用いて比較的広範囲のひずみ速度で引張試験を行い，硬膜の力学特性に及ぼすひずみ速度の影響を調査することを目的とした．