大変位超音波送信のための積層素子の高周波数化

摘要

経年損傷構造物の内部き裂を高精度サイジングするため，現在超音波端部エコー法やフェーズドアレイ法ではき裂端部エコーを利用した測定技術が用いられている．しかし，残留応力等でき裂が閉口している場合や，応力腐食割れ（SCC）等の複雑形状き裂では，き裂端部エコーが検出できない場合があり，き裂の見逃しや過小評価が懸念されている．一方非線形超音波は，き裂に大変位超音波を入射したときにき裂部で入力波周波数の整数倍の成分の高調波と，整数分の1 の成分のサブハーモニック波等が発生する現象で，新しい計測手法の可能性が期待されている．特にサブハーモニック波は，接触媒質や接触状態に依存しにくい実用的な測定手法として，前述の閉口き裂の端部波識別性を向上できる基盤技術として，期待を集めている．これまでの研究で，サブハーモニック波の発生にはき裂開口以上の大振幅超音波入力が不可欠とされ，現在き裂面に50nm 程度の大変位超音波を送信できる装置が実用されている．実機構造物の広範な性状のき裂への適用を考えると，より大変位の超音波送信システムの開発が不可欠と考えて，本研究室では積層圧電素子と多チャンネルパルサーを組み合わせるシステムを中心に開発を行ってきた．これまでに，700KHz 程度までの比較的低周波領域で大変位超音波送信システムを開発してきた．一方,発電機器用構造物に用いられる材料では，MHz レンジの超音波が利用されている．またステンレス鋳鋼やインコネル溶接部等の高減衰材料では，1～2MHz の周波数が主に利用されている．そこで本研究では，現在700KHz までの積層圧電素子の製造方法を再検討し，2MHz 以上の高周波積層素子を開発し，その基礎特性を調べることを目標にした研究を行った．