摩擦攪拌形バニシングによる改質層の切削に刃先丸みが与える影響

摘要

機械製品の性能の向上に伴い，それらに用いられる部品にも高い性能が要求されている．部品の高性能化，長寿命化を実現するには，引張強度·疲労強度·耐摩耗性·耐腐食性といった様々な機械的性質を満足する必要がある．これらの要求を叶える技術として，表面改質技術が広く用いられている．表面改質技術には，ショットピーニング，高周波焼入れなどがある．しかし，これらを運用するには専用の装置が必要である．そこで，笹原らによって回転工具を扱う工作機械を用いた表面改質技術である摩擦攪拌型バニシングが提案されている．摩擦攪拌型バニシングとは，図1に示すように高速回転する工具で表面を擦過し，塑性ひずみと摩擦熱を与えることで表面を硬化させる技術である．しかし，加工面の表面粗さが大きくなり，最終仕上げ加工として用いることは難しい．また，硬く厚い改質層を創成できる条件で加工すると，加工面に引張残留応力が発生する問題点も抱えている．先行研究では，バニシング加工後に切削加工を施し，バリやむしれを除去することで加工面の表面粗さの向上させることを試みた．その結果バニシング加工後に切削加工を施すと，表面粗さが向上し，かつ条件によっては加工面に圧縮残留応力が付与されることが明らかになっている．しかし，切削加工後に圧縮残留応力に転ずる原因は明らかになっていない．そこで本研究では，切削力が改質層の残留応力に影響を与えている可能性に着目し，刃先丸みの異なる工具を用いることで切削力の方向と大きさを変化させて改質層の切削実験を行い，切削力の大きさ，方向と切削後の改質層の残留応力との関係を明らかにすることを目的とする．