米子工業高等専門学校における機械工作実習授業の現状と展望

摘要

高等専門学校（高専）は中学校を卒業した学生を受け入れ,５年間にわたって一貫した専門技術者教育を行う教育機関である．高等専門学校は, その目的として「深く専門の学芸を教授し, 職業に必要な能力を育成する」ことを掲げている．これを受けて, 著者が所属する米子高専では「実験·実習を重視した実践的な技術教育を行う」ことを教育理念としている．高専の教育課程は, 実験·実習に多くの時間を割いている点に特徴があり, 米子高専機械工学科では, １～５年次までの全学年で週３時間·通年30 回の実験·実習科目を開設している．このうち, １～３年次では主として機械工作実習を行い, ４年次以上では専門科目に関連する実験を行っている．近年, 製造業をとりまく環境は産業構造のグローバル化, 製造拠点の海外移転など大きく変化しつつある．また一方で, いわゆるメイカーズムーブメントに代表されるように, 従来の制限にしばられない発想によるモノづくりへの期待も広がっている．高専における授業もこのような状況を無視することはできない．特に, 体験的実践教育の一環である実習授業で学生が身につけるべき素養については, 社会の要請が反映されるべきであると考える．本報告では, 現在米子高専機械工学科で実施している機械工作実習授業の教育目標および概要と, 国立高専の機械工学科における機械工作実習授業の現状およびこれらをふまえて今後の機械工作実習授業の展望について述べる．