窒素ガス雾囲気が切削工具-切いくず接触面に及ば影響

摘要

切削加工では工具寿命改善による生産コスト低減と切削条件の高速化等による生産性丁場が常に求められる．しかしながら，高速切削は加工時間の短縮は図れるものの，切削温度の上昇を引き起こすために工具寿命は低下する傾向にあり，これら 2 つの要求を同時に満たすことは困難である．したがって，高速切削条件下でも工具摩耗を低く抑えるためには切削温度を低く抑える必要がある．ここで，切削加工における発熱源としては大別して工具と切りくず或いは被削材との擦過における摩擦熱，被削材の変形に伴う発熱，新生面における酸化発熱の 3 種が挙げられる．この中で酸化発熱は通常の切削条件下ではあまり考慮されないことが多いが，高速条件下では切削温度が高く非常に活性な状態となるため工具摩耗に多大な影響を及ぼす．このことから著者らはこれまで窒素ガス雰囲気中での切削加工（以下窒素雰囲気中切削と略）について検討を行なってきた．これは切削雰囲気を窒素ガスで置換することにより酸化熱を抑制し，切削温度の低減とそれに伴う工具摩耗の低減を図るものである．これまでの研究において，高速·高送り·断続切削条件下において窒素雰囲気中は工具摩耗低減効果を示すことが明らかになっている．中でも切削速度は最も重要な要因であり，通常の切削速度環境では窒素ガスを用いてもほとhど工具摩耗の低減は見られないが高速切削では工具摩耗の低減が可能になることがわかっている．またこの時，特に工具境界摩耗の大幅な低減が確認されている．ここで，既述のように窒素雰囲気中切削の工具摩耗低減メカニズムは酸化熱抑制による切削温度低減であると推測してきたが，このことにはついて未だ詳細な検討がなされていない．本研究では工具と切りくずが接する切削耐こ注目し，雰囲気ガスの違いにより切削面でどのような変化があるか炭素鋼とチタン合金について調査した．