切削抵抗解析によるチタン合金のエンドミル加工における条件選定手法の提案（第2報）―切削抵抗成分が工具摩耗の進行過程に及ぼす影響

摘要

チタン合金の切削加工では，チタン合金の高比強度，低熱伝導性，高反応性，低弾性率などの材料特性が工具刃先温度の上昇，工具への切りくず溶着，加工中の振動を招き，工具寿命が短いことが問題となっている．工具摩耗には，切削速度や切込みなどの切削条件に加え，工具の種類や潤滑油の性能，工作機械の剛性などの諸要因が大きく影響を与える．そのため，適切な切削条件を設定する際には通常系統的な加工実験が必要とされるが，これには多くの時間とコストを要する．このような背景から，切削中の情報から容易に工具寿命を予測できる手法を確立することで，条件設定にかかるコストの大幅な低減が期待できる．これまでも，工具摩耗の予測に関する研究は多く行われており，鉄鋼材料やアルミニウム合金を被削材とした旋削加工では，工具の逃げ面摩耗幅は工具と被削材の摩擦面に垂直方向に作用する切削抵抗と高い相関があることが報告されている．したがって，工具摩耗低減の観点から旋削加工の切削条件を設定するには，切削抵抗の背分力や送り分力を指標にすることができる可能性がある．その一方でエンドミル加工では，ねじれ角が付与された工具が回転して切削を行うため，工具逃げ面における垂直分力を正確に求めることは難しい．そこで，本研究では切削抵抗の最大値と，工具が被削材に進入した直後の切削抵抗の方向によって工具寿命の予測を行う手法を提案する．前報では，各種切削条件でチタン合金を0.3mエンドミル加工したとき，工具摩耗幅は切削抵抗の最大値および方向との間に相関が見られることを示した．本報では，切削抵抗の方向が異なる2条件で工具摩耗試験を行い，切削抵抗成分が工具摩耗の進行に及ぼす影響について検討した．