自動車ランプ用レンズの表面微細構造による回折光の計測

摘要

筆者らは, 自動車用灯具に使用するレンズ表面に微細な３次元構造を加工して光を回折（拡散または散乱）させることで明暗の境界面をぼかす効果により, 明るさが緩らかに減衰するような工夫をしている．ここでは, 「どのような微細構造にすればどのように光が散乱するか」を形状計測および回折実験によって評価することである．はじめに, He-Ne レーザーを用いて, 様々な表面形状のサンプルの２次元回折計測を行い, 回折光強度分布と形状の関連性を調べる．さらに, 回折法によるレンズ表面に加工した微細構造の３次元形状を計測する新しい手法を提案する．これまで微細３次元形状計測に用いられる共焦点顕微鏡などは, 形状測定に反射光を利用する手法のため, レンズ（透明物体）の反射率は4％程度であり, この手法により, 透明物体の微細構造を完全に計測するのは難しいと考えられている．そこで, レンズを透過する光が表面微細構造により回折する現象を利用して形状計測を行い, 透明物体の表面微細構造の全体のモデリングを可能にするためのシミュレーションを行う．計測結果を配光測定に適用することで, 理想的な配光を実現する微細構造を決定することが可能となる．そこで, 自動車用灯具のレンズ表面上の微細３次元構造による回折散乱の効果および配光分布の測定結果と表面形状との相関関係を評価する技術の確立が求められている．