人工関節用非晶質炭素膜の機械的特性に及ぼすTi 添加および真空加熱処理の影響

摘要

深刻な社会問題に高齢化が挙げられ，高齢者の健康問題への対応は重要課題である．たとえば，加齢とともに変形性関節症などの関節疾患が増加し，関節に激痛を伴うため歩行困難に陥る．この治療の一つとして，人工股関節への置換手術が行われる．人工股関節は，カップの摩耗粉が原因で10-15 年間しか使用できない．その改善方法として摺動面に固体潤滑薄膜を創成する方法などが検討されている．固体潤滑薄膜の中でも非晶質炭素膜は，生体親和性や摩擦特性が優れているため，人体内での使用に適している．しかし，非晶質炭素膜単体では密着力が低いことから，人工股関節への応用が困難である．この非晶質炭素膜の密着力を向上させるために，非晶質炭素膜中に金属を添加する方法や中間層を形成する方法などが研究されている．本研究では，非晶質炭素膜の密着力を向上させるために化学的に活性で生体親和性に優れるTi を添加し，膜創成後の真空加熱処理による影響を評価した．