低消費電力無線端末のための圧電薄膜を用いたデジタル出力加速度センサーの開発

摘要

近年、温度や湿度、加速度等の環境情報を多数の無線端末によりセンシングすることで安全や快適、エコロジカルな生活等を可能にするユビキタスセンサーネットワーク技術が注目されている。その重要な応用のひとつとして、我々の研究グループでは鶏の健康状態をモニタリングするための無線端末を利用した鳥インフルエンザの早期発見システムの開発を行っている。鶏にストレスなく無線端末を取り付けるためには、端末が小型、軽量であることが不可欠であり全重量が1 g 以下であることが望ましい。その場合、無線端末に搭載される電池容量は制限せざるを得ず、長期間端末を稼動させるためには無線端末の電力消費量を低減させる必要がある。鶏の病変判別は活動量（加速度）と体温をモニタリングすることにより行う。鶏はインフルエンザに感染すると体温の上昇が見られるが、インフルエンザウイルス株によっては体温上昇をほとhど伴わずに死に至るものもあるため[3]、体温と共に鶏の活動量を加速度センサーにより測定する必要がある。加速度センサーは、MEMS (Microelectromechanical systems) 技術を応用した小型センサーが多数開発されている。これらのセンサーを使用することにより高精度なデータが取得できるが、センサーを稼動させるための電力と、無線で送信するときにデータをデジタル化するために必要なA/D コンバーターを必要とする。一方で、我々の目的のように動物が病気にかかることにより健康が害されたことをセンシングする場合には高精度な加速度データは必要なく、加速度があるいくつかの閾値以上か以下か程度の情報が取得できれば十分に目的を果たせる場合がある。また、省電力化のためには動物の活動エネルギーを利用したセンシング方法であることが望ましい。本報告ではセンサー自身の稼動電力、A/D コンバーターが不要な圧電薄膜を用いた低消費電力デジタル出力加速度センサーの開発について報告する。