超音波振動切削法による微細異形穴加工第3法：One-path micro slotting での六角穴加工

摘要

医療分野，情報機器分野などの機器製造のニーズで微細な穴や溝を機械加工する必要が生じており，加工技術の確立が望まれている．これに対応して，著者らは寸法3mm 以下の微細な部品へのミリ－サブミリオーダの角穴，スプラインなど円形穴以外の異形穴の高精度レベルの加工を試みた．異形穴又は溝の成形方法として，2種類の加工方法を考案した．One-path micro slotting と呼ぶ，1工程の切削により目的とする形状に応じた切れ刃を持つ工具で成形する方法，Multi-path micro slotting と呼ぶ，微小な直線状又は曲線状の単一切れ刃を持つ工具で，形状に対応して工具切れ刃の位置および角度を変えながら，数回の工程の切削により成形する方法である．前報までに各方法での特徴を実験により確認した．Multi-path micro slotting による方法では，超音波振動の切削抵抗低減効果により，1 工程ばかりでなく10 工程の溝加工実験においても高精度加工が可能であった．これに対して，One-path micro slotting では，切りくずの排除が困難であり，また，出口端に大きなバリが形成され，微細な穴や溝の加工に困難を伴うことを示した．しかし，One-path micro slotting はMulti-path micro slotting に比べてより微細穴を加工できること，並びに要求する形状を1工程で加工できて効率的であるなどの利点を有している．本報告では，One-path micro slotting による微細異形穴加工の実用化を目指して，六角穴加工での超音波振動切削法の効果と精度に影響を与える因子の検討を行う．